最新の脳動脈瘤治療

大型・巨大脳動脈瘤に対する血管内治療 
~フローダイバーターについて

脳動脈瘤に対する代表的な治療には開頭によるクリッピング術やカテーテルによるコイル塞栓術があります。
しかしながら、大型・巨大な脳動脈瘤、あるいは物が二重に見える(複視)症状で発症する海綿静脈洞内の脳動脈瘤はそもそもクリッピング術が不可能であったり、コイル塞栓でも症状が改善しない、治癒に至らないことがあります。
大型・巨大脳動脈瘤に対する画期的な治療法としてフローダイバーターが注目されています。
現在、国内で使用可能(臨床治験中のものを除く)なフローダイバーターは2015年4月に薬事承認されたPIPELINETM FLEX FLOW DIVERTER SYSTEMのみです。径10mm以上の未破裂内頚動脈瘤 で錐体部から後交通動脈近位に存在するものに対しPIPELINEによる治療適応があります。
PIPELINEのサイズ選択には厳密な血管径の計測が必要で、また治療には高度な技術が必要です。

フローディスラプター

Woven EndoBridgeデバイス(W-EB)

Woven EndoBridgeデバイス、略称W-EB(ウェブ)とは、脳の血管にできる袋状の出っ張り(動脈瘤)を治療するために使われる、細かい網のような形をした医療機器です。このデバイスはニッケルとチタンの合金でできており、体内で形を保つ力と柔軟性があります。

治療では、太ももの付け根から細いチューブ(マイクロカテーテル)を血管に通し、そのチューブを使って脳の中にW-EBを送り届けます。W-EBを動脈瘤の中に入れ膨らませることで血液の流れを止め、動脈瘤が破裂するのを防ぎます。特に広い開口部を持つ動脈瘤で効果を発揮し、今まで難しい手術が必要とされていたワイドネック分岐部脳動脈瘤の治療に対応が可能です。

以前の治療法では、多くのコイル(金属製の細長いひも)を使って動脈瘤をふさぎ、さらに血管内に固定するための機器が必要でしたが、W-EBなら1つのデバイスだけで治療が完了し、手術時間も平均で約20分と短くなります。さらに、他の治療法のように長期間の抗血小板剤の服用が不要というメリットもあります。

W-EBは世界中で1万例以上の治療に使われており、日本でも使用が可能となりました。
函館新都市病院 脳神経外科でもこのデバイスを導入しており、良い治療結果を得ています。

このW-EBデバイスによる治療は全ての症例に適しているわけではなく、患者さんの具体的な病状や動脈瘤の位置、大きさ、形状によっては、この方法が適さない場合もあります。治療法を決定する際には、医師が患者さん一人ひとりの状態を詳しく診て、最も適した治療方法を提案いたします。